株価の動きを示すものとして、東証株価指数や、NYダウ平均株価などがあるのはご存知の方はだ多いでしょう。
実際にどういうものか詳しくは知らなくても、ニュースの最後の方でやっているのは見たことがあるはずです。
実はそれ以外にも色々と株価の値動きを示す指標があるのですが、今回はその中でも『S&P 500』をご紹介したいと思います。
S&P500とは?
S&P500とは、米国株式市場の代表的な指数(インデックス)のことです。
S&P500種指数 (エスアンドピーごひゃくしゅしすう)
米国株式市場の動向を示す株価指数のひとつ。S&P(スタンダード・アンド・プアーズ)社 ダウ・ジョーンズ・インデックス・エル・エル・シーによって算出される、時価総額をベースにした指数です。
工業株400種、運輸株20種、公共株40種、金融株40種の各指数で構成されていて、採用銘柄は約40業種に及んでいます。ニューヨーク市場の時価総額の約75%をカバーしていて、市場全体の動きを表す指標として機関投資家などに広く利用されています。
SMBC日興証券HPより引用・抜粋
S&P500に近い日本の指数としては、日本のTOPIX(東証株価指数)や日経225などがあげられます。
TOPIXは、東京証券取引所の第一部に上場している全銘柄で構成されていて、算出自体も東京証券取引所が行っています。
これに対して、S&P500は米国株の大型株を順番に500銘柄を選んだという単純な構成ではありません。業種分散も考慮され、米国市場全体を代表する指数となっています。
S&P500の採用銘柄は、米国株式市場の時価総額の約80%をカバーしています。
日本でS&P500により近いのは、TOPIXよりも日経225の方と言えますね。
日経平均株価/日経225
日経平均株価とは、日本経済新聞社が発表する株価指数のことで、東証1部上場銘柄のうち、代表的な225銘柄をもとに計算されています。
日本の株式市場の大きな動きを把握する代表的な指標として用いられ、投資信託や先物取引などの商品にも利用されています。
東証1部の代表的な銘柄を選定して指標としているため、定期的に組み入れ銘柄の見直しが行われていますが、分母(除数)の修正などで株式分割や銘柄入れ替えなど市況変動以外の要因を除去して指数値の連続性を保っています。
SMBC日興証券HPより引用・抜粋
S&P500指数の運用資産の総額は、7兆8千億米ドルを超えます。これを1ドル=110円で日本円に換算すると、858兆円となり日本の国家予算(一般会計総額:102兆6580億円)の約8.4倍に相当する額となります。
連動する金融商品の運用資産額は、約2兆2千億米ドル(日本円で242兆円)にもなるスーパー指数なのです。
S&P500の構成銘柄
では、具体的にS&P500は、どのような銘柄で構成されているのでしょうか。
下の表とグラフは、2020年3月のS&P500の上位30銘柄になります。
S&P500構成銘柄TOP30
1位Microsoft・2位Apple・3位Amazon・4位Facebook・5位ウォールマートと、一流の銘柄が並んでいます。
S&P500は時価総額の指数ですので、このように時価総額が大きいものが並びます。
つまり、株価が高くなっているはやりの銘柄が、大きいウエイトを占める指数なのです。
S&P500は過去十年くらいずっと上がり続けていて、コロナウイルスが来る前までは順調に上がっており、本当に超安定した投資と呼ばれているのです。
S&P500とNYダウ平均の違いは?
一方で、NYダウ平均は米国の代表的な30社を選定し、その時の株価を指数としています。
30社だけであること、またその時の株価は、銘柄の株価によって影響が異なりますので、米国市場全体を反映しているとは言い切れません。
対してS&P500は、米国の全主要セクターに投資する時価総額をもちいる指数なので、NYダウ平均より米国市場全体の動きを反映していると言えます。
以下の表では、S&P500とNYダウ平均の銘柄を比較してみました。
それとともに、どのような企業が入っているのかも確認してみました。
S&P500には、通信サービスや情報技術といったIT系の企業が多く含まれているのがわかります。
NYダウ平均には、ウォルマートやP&G、それにマクドナルド等が組み入れられており、一般消費財の比率が高くなっています。
また逆に、NYダウ平均には素材や不動産、公共事業といったジャンルは含まれません。こうした違いからも、どちらがアメリカ経済を明確に示す指数となっているかが分かります。
S&P500構成銘柄の選定条件
S&P500は、以下の条件をクリアできれば、ランクインすることができます。
時価総額 |
時価総額が61億ドル以上あること。 |
流動性 |
評価日までの各半期における売買高が最低 25万株あること。 |
本拠地 |
米国企業であること。つまり、10-Kを提出していること、米国の売上が大きいこと(しかし、米国売上比率が50%を超えていなくてもよい)。 |
浮動株 |
最低 50%が浮動株であること。 |
セクター分類 |
セクター間のバランスの維持 |
財務健全性 |
直近の四半期および直近の連続4四半期で利益が黒字であること。 |
IPO |
最低でも上場から12か月後になってから検討。 |
逆に除外要件は以下のようになっています。
- 吸収・合併もしくは大規模な再編
- 基準の一項目以上を著しく逸脱した企業
基本方針として、頻繁な入れ替えはしないのですが、状況を見て入れ替えを行っています。
特に利益指標が選定基準から外れてしまう銘柄は必ず出て来てしまいますので、入れ替えは定期的に発生しています。入れ替えは投資対象に相応しくない銘柄を切ってくれるというメリットもありますが、デメリットもあります。
S&P500は世界一有名な投資指標でもあるので、銘柄入れ替えを発表するとすぐアクティブ投資家が群がって買いに走ることが頻繁に起こります。そうなると、高値掴みになってしまうため、あまり入れ替えは活発ではないです。
とはいえ、AmazonやFacebookなど、ここ10年で台頭してきた新しい企業が次々と出てくる新陳代謝の良い市場が、米国株式市場の魅力だと言えますね。
保守的な日本市場では、このような新旧の交代はなかなか無いことです。
S&P500は大型株を集めたものとはいえ、500社もありますから、成長力がある新規企業が多く出てきます。そうした新進気鋭の企業を取り込むには、NYダウ平均よりも良い指数になると言えるでしょう。
S&P500の有効性
ここまでご紹介してきたようにS&P500は、米国の主要産業を代表する500社で構成されています。そのため、国際分散という面で見た場合、米国1国では物足りないように思えるのも確かです。
ですが、こちらの表をご覧ください。
大和投資信託2017年12月4日付マーケットレター3ページより引用
上の表はS&P500の採用銘柄の海外売上高比率(%)になります。若干減少傾向にはありますが、40%を超えている状態です。
S&P500の上位企業は多国籍企業が多く、また強固なブランドを保有する企業も多いのです。これらの理由から、世界市場全体からも十分によい結果を取り込める指数と言えそうです。
ただ、気になる点もあります。
さきほどの表でも少し触れたように、売上が若干ではありますが、年々減少傾向にあるということが一つ。
そしてもう一つが、S&P500は時価総額ですので、株価が高騰している銘柄の比重が高まる傾向にあるわけです。その状況でS&P500に投資をすると、どうしても「高値掴みになりやすい」と言われています。
でもその心配は、過剰な反応なのかも知れません。
『投資の神様』と言われるウォーレン・バフェット氏は、2013年のバークチャー社の株主への手紙で、奥さんへの遺言として 「遺産運用は90%はS&P500インデックスを、10%は米国短期国債を買うように」 と推奨したと述べています。 |
このように、『投資の神様』ウォーレン・バフェット氏も、S&P500インデックスファンドを推奨しているので、特に問題はないと考えてもいいのではないでしょうか。
S&P500に投資するなら?
S&P500に投資したいなら、海外ETF(上場投資信託)ではバンガードのVOO。ブラックロックのIVVで投資できます。国内ETFならSPDR S&P500 ETF(1557)などあります。
また、S&P500は2018年から開始されたつみたてNISAの対象とする指数の1つに指定されています。
この、【つみたてNISA(積立NISA)】とは、投資信託に積立投資を行う金融商品のひとつです。
日本国内には約6000本の投資信託がありますが、つみたてNISAでは金融庁が定めた厳しい条件をクリアした約180本の中から選ぶことができます。投資信託を使いたい場合は、その対象から選ぶといいでしょう。
つみたてNISAの国別の指数は、日本のTOPIXや日経225などのほかには、S&P500しかありません。つみたてNISAは長期の運用ですが、低コストで米国の経済成長を味方につけることができる金融商品だといえるでしょう。
このようにS&P500は、市場の動向を探る上で、重要な指数であると共に、ETFやつみたてNISAといった金融商品としても、非常に有用です。
ぜひこの機会に、S&P500を再注目してみてはいかがでしょうか。