サラリーマンの不動産投資は「副業」にはならない!?その基準や理由を解説

不動産投資を始めたいと思っても、躊躇してしまう一番の理由は「会社で副業が禁止されているから」というものです。確かに未だに副業を禁止している会社は多いですよね。政府は「副業推進」「副業解禁」と言ってはいるものの、実際に副業を認めている会社はまだまだ日本では少数派です。

ですが、サラリーマンは会社で副業が禁止されているからといって、本当に不動産投資を始めることはできないのでしょうか?

先にお伝えすると、会社で副業禁止の規定があっても、サラリーマンは不動産投資をすることはできます。

今回はサラリーマンが行う不動産投資が「副業」にはならない基準や理由についてお伝えしていきたいと思います。

副業禁止にしている日本の企業は多い

厚生労働省は平成30年に「副業・兼業の促進に関するガイドライン」を作成しました。その中身を見てみると、「副業・兼業を認めていない」と回答している企業は85.3%にものぼっています。
いくら政府が副業を推進しても、企業は結局あまり変わっていないということですね。

そもそもなぜ就業規則に「副業禁止」を盛り込んでいるのかというと、

  • 本業に支障が出るから
  • 情報やノウハウが漏れるリスクを懸念している
  • 競合する事業に就かれると困るから

このような理由が多いようです。

副業禁止でも不動産投資はできる

会社で副業を禁止されていても、「投資」は禁止していない企業がほとんどです。その場合、サラリーマンが会社の規則を守って副業や兼業はしなかったとしても、投資については自由にやることができます。

不動産投資は「投資」なので、まったく問題ありません。

ただ、FXや株などは禁止している会社もあります。その理由は、タイミングをみた決済やデイトレードが必要だからです。
先ほどの、企業が副業を禁止している理由で多かった「本業に支障が出るから」にあたると考えてのことでしょう。実際にトレードが気になって本業が手につかない、という人は少なくありません。

一方で、不動産投資は勤務時間に作業をする必要がないので、禁止にする理由もありませんし、中には「サラリーマンという属性」の価値を知っているために、不動産投資をすすめている会社もあるくらいです。

そもそも企業は従業員の副業を禁止できない?

サラリーマンをしていると、勤めている会社のルール、つまり就業規則が絶対だと思っています。ですが、そもそも会社は従業員に対して副業を禁止できるのでしょうか。

実は、会社が従業員の副業を禁止することはできません。なぜなら、日本国憲法によって「職業選択の自由(第22条)」を保障しているからです。

法律的には「従業員の労働時間外の行動を縛り付けることはできない」あるいは「できたとしても限定的」というのが、通常の解釈となっています。
つまり、「職業」には副業も含まれていて、副業をするかしないかについても、個人の自由ということです。

先述した厚生労働省が出している「副業・兼業の促進に関するガイドライン」の中でも、「原則、副業・兼業を認めるとする方向が適当である」とはっきり明示されているくらいですからね。

にも関わらず、多くの企業が就業規則に「副業禁止」を盛り込んでいるのです。

副業禁止に疑問を持たなかった時代背景

日本は、高度経済成長期にはサラリーマンの「終身雇用」や毎年の「定期昇級」が約束されていました。つまり、サラリーマンとして企業に勤めていれば、生活は保障されていたということです。

会社で普通に自分の仕事をしていれば、毎年給料も上がるわけなので、「副業をしよう」「何かもう1つ仕事を探さないと」と思う必要がなかったのでしょう。その時代に「副業禁止」という就業規則があったところで、不満もなければ疑問も感じないのは当然です。

ですが、バブル崩壊後の日本は経済の成長が鈍くなります。当然それまでのように、何もしなくても給料は上がるという時代ではなくなりました。終身雇用制度も崩れていきます。

そうなると、将来に対する不安が出るのは当然ですよね。不安を解消するために、本業以外で収入を得ようと思う人がでてきたのです。

時代の変化で企業が副業を認める理由

バブル崩壊後、企業もそれまでのような売上をあげることができません。そこで、「副業で稼いでもいいですよ」「今までのように十分な給料や保障は出せなくなります」となった企業が出始めたのです。これが、当時の副業を認める理由でした。

最近はというと、もちろん同じように「もっと収入を増やしたいなら自分で稼いでください」という理由もあります。ですがそれだけではなく、

  • 「副業を認めることで、自社の本業にメリットをもたらす相乗効果の期待」
  • 「会社だけではなく、枠を超えて培った人脈やスキルやを本業にもいかしてほしい」
  • 「従業員に会社の仕事以外のチャレンジをさせてあげたい」

このような理由も増えています。
みてわかるように、従業員のため、会社の利益につながる期待という理由もありますが、企業イメージのアップにもつながることを考えている会社もあります。本業以外でもチャレンジできる企業ということで、人材採用でのアピールポイントにもなりますよね。そのため、以前は中小企業が中心でしたが、最近では大企業でも副業を認めるケースが増えています。

不動産投資は問題ないとわかっていても始めづらい人へ

ここまでの話で、

  • 不動投資は「投資」であって「副業」ではない
  • そもそも法律的には「副業」は禁止できない

ということがご理解いただけたはずです。

とはいえ、やはり会社の就業規則に「副業禁止」がある以上、始めづらいという方も多いでしょう。サラリーマンとしては、当然ですが勤務先との関係は良いものでいたいはずなので、その気持ちはよく理解できます。

「法的に問題ないから!」といって揉めてしまうのも嫌でしょうし、就業規則違反という理由から裁判沙汰になる可能性もゼロではありません。

裁判になっても、基本的には本業に迷惑をかけてなければ勝訴するでしょう。ですが、そういう問題ではなく裁判自体が嫌ですよね。

そこでお勧めなのが、不動産投資を「副業」にはあたらない範囲で運用することです。

不動産投資は「5棟10室」以内なら副業にあたらない

不動産投資で家賃収入を得る場合、1年に1回、不動産所得の確定申告をする必要があります。

その際にポイントとなるのが、「不動産投資を事業規模でやっているのか?」ということです。つまり、「事業」なのか「個人」なのかの線引きがあり、所得税の計算もどちらかによって大きくかわります。

事業規模かどうかのラインは「5棟10室」といわれています。一戸建てならなら5棟、アパートやマンションなら10室という意味です。この範囲内であれば、個人として行っていたとしても問題ない、つまり事業ではないので「副業」にもあたらないと考えられています。

これなら副業禁止の規定があっても、安心して始めることができますね。

住民税は「普通徴収」に変更する

不動産投資の規模として、「5棟10室以内」であれば、事業規模にはならないといわれています。ですが、会社から副業を疑われる可能性はまだゼロではありません。疑われるきっかけになるのが「住民税」です。

住民税の計算は、給料としての収入に家賃で得た収入も足して計算されます。そのため、明からに会社の給料だけではない住民税の納付額の場合、会社に疑われる可能性もあります。

ただ、この防ぎ方は簡単です。確定申告をする際、住民税を自分で納税する「普通徴収」に変更しておけば問題ありません。

難しいことは何もありませんので、忘れないようにしてください。

会社とうまく付き合っていいくことが大切

サラリーマンが不動産投資をするためには、サラリーマンであることが重要です。会社からの安定した給料をもらえているからこそ、金融機関からの信用でローンを組めますし、自分自身の安心感もあります。

お話ししたように、「5棟10室以内」であれば、事業にはあたりません。会社に副業禁止の規定があったとしても問題なく始めることはできます。

ですが、サラリーマンという属性をいかして不動産投資をやっていく以上、勤務先から誤解を受けない方が良いのは間違いありません。問題ないとわかっていても、念のため会社の就業規則がどうなっているのかは、確認しておくようにしましょう。